神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

ボリショイ・バレエ「明るい小川」

macky-jun2008-12-11

  昨晩は風邪を引いた妻に代わって、上野の東京文化会館で行われたロシア国立ボリショイ・バレエ団が本邦初演となる「明るい小川」を急遽、観に行くことになった。大江戸線春日駅で妻からチケットとパンフレットとオペラスコープと菓子パンを受け取り、上野の会場に向かった。7時開演だった。馴染みのない演目であり、当初気乗りはしなかったが、舞台のストーリーを読むうちに、徐々に面白そうだぞと、興味が湧いてきた。
 「明るい小川」・・・名前からは田舎じみた、垢抜けないバレエのような気がするが、これがロンドンで大受けし、本拠モスクワでも繰り返し上演される人気プログラムになっているらしい。これはソ連時代のコルホーズという集団農場の名前で、そこの豊作を祝い、モスクワからバレエを始めとする芸術慰問団がやってくる。そこで起こる本当に他愛もない話(男の浮気と色恋沙汰)であるが、この喜劇バレエを、かつてキエフやカナダ・ロイヤル・ウィニペグデンマーク・ロイヤルでソリストとして活躍した、現在、同バレエ団芸術監督のアレクセイ・ラトマンスキーが、とても知的な振り付けをしている。音楽は現代音楽巨匠のショスターコヴィッチであり、彼にとって3番目のバレエ音楽だ。前に観た「ラフィーユ・マル・ガルデ(リーズの結婚)」のような明るい、楽しいバレエだった。
 まだ若いけど、プリンシパルに次ぐリーディング・ソリストにいるナタ−リャ・オーシポワ(Natalia Osipova)の存在感がひときわ際立っていた。細い体、小さな頭、伸びやかなどこまでも伸びる手足はソリストなら当たり前のこと。オーシポワはジャンプも高く、体の稼動範囲が広いのだろうか、ポーズが決まるのである。また、男性ソリストに飛び込んでいく捨て身のジャンプは迫力があった。仮に受け損なえば、大怪我をするような、大胆な勢いで飛び込んでいくのだが、あのような演技はこれまで観たことがなかった。たぶん、今後スヴェトラーナ・ザハーロワの後継者となっていく逸材ではないかと思われる。
 この日、僕はすっかりオーシポワに魅せられてしまった。彼女はモスクワ生まれ。2004年モスクワ国立バレエ・アカデミーを卒業し、ボリショイ・バレエに入団した。以降、数々の賞を受賞し、並居る先輩ソリストを飛び越して、リーディング・ソリストになっている。パンフレットの写真写りがあまり良くないのが可哀想である。実際のステージ上の彼女はとても、自信に溢れ、とても魅力的だった。「自信に溢れ」という要素がとても大事なのかもしれない。オーラを放つのであろう。
 この日、モンテカルロ・バレエのような女装バレエで大いに笑いを取った、名手セルゲイ・フィーリンを始め、ダンサーはどの人も素晴しかった。中でも日本人の岩田守弘がアコーディオン奏者という彼特有の道化周りの役を演じ、大喝采を浴びた。前日、NHK「プロフェッショナルー仕事の流儀」で、38歳の小柄な日本人ダンサー岩田守弘の特集をしていたばかりだった。ボリショイで既に13年。旧ソ連時代から渡り、苦労に苦労を重ねたようだ。ペレストロイカで漸く運が向き、実力でソリストの座を勝ち取ったようだ。彼は小柄(166cm?)だったハンディも自分の個性だと言い切る。それが道化としての今の役作りに活きた。いま、38歳でもなお、名門ボリショイの1stソリストとして踊っている。過去、熊川哲也吉田都が英国ロイヤル・バレエ団のソリストとして活躍した。今なお、海外の一流バレエ団で活躍する日本人ダンサーは多くない。岩田守弘の活躍を応援していきたい。