神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

活字離れって本当?

macky-jun2008-11-23

  「どこぞの国の首相は漫画ばかり読んでいるので漢字を知らない」とマスコミから集中砲火の攻撃を受けている。首相はともかく、「活字離れ」ということが言われて久しいが、本当にそうなのだろうか?確かに、出版会社の売上高、発行部数は減っている。書籍・雑誌の実売総金額は1977年1兆14百億円から96年2兆69百億円まで、年率で2〜9%の成長をしてきた。しかし、96年をピークに以降マイナス成長となり、2006年は2兆26百億円に減少している。書籍総発行部数は1977年96百万冊→97年がピークで157百万冊→06年143百万冊となっている。しかし、新刊本の点数はむしろ増えている。1977年25千冊→97年62千冊→06年81千冊であり、一貫して増え続けている。毎日、200点以上の新刊本が世の中に新たに誕生していることになる。(数字は「出版年鑑」統計から)
 また、ブックオフなどの中古本店の売上、図書館の貸し出し冊数は増えている。書店の数は大幅に減っているが、大型店が増加しているので、店舗面積でみれば増えているのだろう。書店数は2001年20,939店→08年16,404店となっており、ここ10年間では6,000店が減っている(アルメディア調査)。店舗面積は公取委データに拠れば、2001年125万坪→08年140万坪とむしろ増えているのである。 http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/08/post_3840.html
 これらのデータから言えることは何か。出版・書店業界の「ロングテール現象」であると思う。ロングテール(尻尾の長い恐竜)については梅田望夫氏の「ウェブ進化論」(ちくま新書)に詳しい解説があるのでそちらに譲るが、2004年秋頃から米国で使われだしたIT用語で、インターネットの本質にかかわる重要な提起を含んだ新語である。ネット書店であるアマゾンの成功とも一致するが、人々の嗜好・趣味が極めて多様化していることを表わす。それ故に1点当りの発行部数は減っているが、新刊本が過去最高の点数に増えているように、人々の需要は多様化している。また、ブログの発達で、これまで一部のプロ作者に限られていた発信者側の数も増殖していることが、新刊点数の増加に繋がっている。こうした「ロングテール現象」に対応する為には書店の大型化は必須となっていく。
 ペーパーベースの書物や雑誌・新聞が読む対象であった時代に比べ、現代ではネットが共通の媒体となっており、HPやブログを読む機会が増えている。従来の手紙という通信手段に加え、メールをPC/携帯で日常的に使って、頻繁にコミュニケーションが行なわれている。人は活字からは決して離れられない。むしろ、以前に比べ、活字を読む機会は増えているのではないかと思えるのである。ちょうど出版統計が示す数字が、96・7年をピークとして減少しており、ネットの誕生から浸透への時期と符合するのである。特に、雑誌のマイナス成長は手軽に読めるもの、もしくは最新の情報源としての役割が、雑誌からネットに移行しているのではないかと思われる。
 このように、世間で言われるイメージとか空気に流されず、データから客観的に判断をして、真実は何かを見究めていくべきだろう。世間の常識を疑ってみるということかもしれない。常にそれは「意見」なのか、「事実(ファクト)」なのかを峻別して、考えてみるということが大事なのだろうと思う。