神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

倉都康行「投資銀行バブルの終焉」

macky-jun2008-10-19

今日は実に2週間ぶりにジムに行ってきた。何ともひつこい風邪で、寝込むほどではなかったが、少しずつ症状を変え、燻り続けた。運動をしなくなると億劫になってしまうが、いざ動いてみると、暫く働いていない筋肉が自分の存在に気づいてくれたとばかり喜んでいるようで、実に心地よかった。
 帰りがけ、市ヶ谷の文教堂書店に寄り、前から読もうと思っていた小幡績著「すべての経済はバブルに通じる」と朝、新聞の広告で読んで面白そうだった竹中平蔵著「竹中式マトリクス勉強法」の2冊を購入。幻冬舎はミーハーな本が多いが、広告と企画が上手く、読者をつい買う気にさせる。その外にも書店の平積みになっている本を中心に立ち読みをする。子供の頃から書店で時間をつぶすのが好きで、行くと1〜2時間は平気でいるのだった。それにしても、最近はどこの書店に行っても、勝間和代さんの本がたくさん並べられており、行くたびに新作が並んでいる。去年から10冊くらい出版されているが、いったいよくそんなに書く時間があり、テーマと内容が浮かぶな、と感心している。共同制作者でもいるのだろうか。
 つい最近まで、倉都康行という人の書いた「投資銀行バブルの終焉」という本を読んでいたが、とても面白かった。彼は東京銀行の香港、ロンドン支店で国際資本市場業務を担当した後、チェースマンハッタン銀行のマネージングダイレクターを経て、独立。最近は金融関係の著作を精力的に執筆されているようだ。この本ではサブプライム問題のメカニズムを詳細に解明している。投資銀行の歴史的な成り立ちを商業銀行との比較で振り返り、投資銀行デリバティブという金融商品開発に手を染め、レバレッジ経営に傾斜していった背景、格付け権威の失墜、バブルを米国の国益と共に利用していったこと、最後にサブプライムを契機として投資銀行の時代が終わりを告げていることを説明していく。
 この本が書かれたのが08/5であり、出版日が7/22であり、この時点で破綻した投資銀行は08/3のベア・スターンズのみであり、もちろんリーマン・ブラザーズもメリル・リンチもモルガンスタンレーも健在であった。すなわち本書は今日の投資銀行の破綻を予告していたことになる。1か月前のリーマン・ブラザーズの破綻・メリル・リンチのバンカメによる救済合併というショッキングなニュースがあって、この本をあらためて読み返してみると、とても感心してしまう。金融の実務を知っており、日系・外銀の両方で金融ビジネスを体験してきた著者ならではの分析は、よくわからずに書いている学者や評論家の文章とは一味違う。とても地に足のついた内容で、信頼に足る内容となっている。小生の「インベストメントバンクの破綻」を書く際にも、参考にさせてもらった。本書は冷静かつ論理的に、また時にアカデミックに展開しているが、各章の標題が実に洒落ているのだ。前奏曲「真夏の夜の悪夢」から始まり、第1章小夜曲(セレナーデ)「投資銀行への憧憬」、第2章幻想曲(ファンタジー)「技術開発の光と影」、第3章狂想曲(カプリッチオ)「レバレッジ経営の末路」、第4章鎮魂曲(レクイエム)「崩壊する偶像崇拝」、第5章逓走曲(フーガ)「バブルを追い掛けて」、第6章葬送行進曲「強まる投資銀行への逆風」、結び「金融は誰のために」となるのだが、各章は4つの楽章からそれぞれ構成されている。クラッシックファンなのでもあろう著者の遊びであろうが、相当な皮肉も込められていて、楽しくなる。
 写真は毎週金曜日の昼(12〜13時)に日比谷公園野外小音楽堂で開かれる金曜コンサートの様子です。”森の音楽会”という形容がぴったりな、とても気持ちのいい雰囲気です。聴衆は年輩の方が多いようで、柔らかな空気が流れています。