神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

智に働けば角が立つ

macky-jun2008-02-18

 ”山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。”
 有名な夏目漱石の「草枕」の書き出しのくだりです。まさに最近はこんな心境で、若い頃読んだ漱石を読み返し、明治の時代に遊んでいる。心の漂流を楽しんでいる。漱石の文章はユーモアに飛び、歯切れがよい。名文家であり、こんなテンポのいい文章が書けたらと思います。この「草枕」のようにリズム感のある、格調の高い文章も素敵です。
 ブログを始めるようになってから、どうせ書くならうまい文章を書きたいと思うようになった。人によっていろいろな文体があるけれど、ロールモデルとして、いろいろな人の文章をあらためて読んで研究し、参考にしたい。人は真似るところからスタートするのだけど、誰がロールモデルとして適切か?いったい自分はどんな書き手を目指すのか?そんな疑問のなかで、学生時代に一番馴染んだ、やっぱり漱石が浮かんできたわけです。漱石は長編小説を書いていたばかりでなく、小説の中でも評論の形としても、文明批判をユーモアのなかでさりげなく展開している。人の心の在り方を「私の個人主義」や”則天去私”という境地で示した。とても深い、含蓄のある文章を書いています。漱石を読み始めたのが小学4年で、主に高校時代に読んだのだけど、当時では理解できなかったことが、漱石晩年の年齢になった今だからこそ、わかるのではないかと思ったのが読み返しているきっかけです。
 その中でも冒頭の「草枕」の一節が最も印象的な、忘れえない文章です。最近の世の中、いいニュースはない。株式相場は低迷しており、立ち上がる気配すらない。新興市場はまったく勢いを失い、公開件数はガタ減りだ。苦労して狭き門を上がっても、相場が悪く、株価はつかない。最近の公開では軒並み公募株価を大きく初値が割り込んでいる。我々キャピタリストの仕事ではキャピタルゲインがろくろく得られず、あがったりだ。季節は冬真っ盛りであるが、陽射しにはどこか春のおとづれが感じられる。しかし、経済にはそれは感じられない。市場環境の悪さを受け、公開延期や取り止めが増えている。重苦しい状況がいったいいつまで続くのか。
 こういう時こそ、目の前の仕事から一歩離れ、時に古典を読んだり、現実から距離を置き、一つ一つの事象をじっくりと考えてみたい。そのことの本質的に意味することは何なのか。知らないことを勉強してみよう。一つとしてためにならないことはない。金がなくても、心と知恵が充実していれば豊かと思えるようになろう。内なる充実を目指す時期とわりきっていきたい。