神楽坂のキャリアコンサルタント

永らく「神楽坂のキャピタリスト」のタイトルで発信をして参りましたが、この度タイトル名の変更を致しました。

日本は本当に豊かな国か

macky-jun2010-12-26

 昨日、TBSで再放送の「帰國」というテレビドラマを観る。戦死した兵士の亡霊たちが現代社会を見て、「この経済発展した日本は本当に豊かで幸せなのか」と思うというストーリーだ。倉本聰脚本で、ビートたけし長渕剛らが演じる。経済的には豊かになったが、いまのこの国の人間の心は本当に豊かか、と投げかける。感じることが多い番組だった。
 「豊かさとは何か」「本当の幸せとは何か」というのは普遍的なテーマである。このブログでも度々こうしたテーマをいろいろな角度で挙げてきたから、私にとってもメインテーマとも言える。戦後から既に65年経ち、日本は焼け跡の中から戦後復興を遂げ、奇跡的な高度成長で、GDP世界第2位の経済大国になった。いまや中国にGDPで抜かれ、新興国が追い上げており、経済的な勢いは失いつつあるかのように見える。国際的なランキングも下降する一方である。
 しかし、世界の国々を広く見渡してみれば、これだけモノに溢れ、欲しいモノは手に入り、街が色鮮やかな国はそうそうない。不景気だといいながらも、街には人が溢れ、あらゆる種類の外食店があり、世界中の食材がスーパーや百貨店に行けば手に入る。水道水だって、安心して飲むことができる。そもそも、この国は安全だ。犯罪もあるにはあるが、総じて安全度は高いと言えよう。鉄道は時間に正確で、あまり遅れることはない。ストライキも今や殆どない。自然も美しいし、文化的な遺産もたくさんある。四季が生活を味わい深くし、楽しませてくれる。
 日本という国のいい点を挙げれば枚挙に暇は無い。世界レベルで見れば、相当高い水準のいい国ではないかと言えよう。すなわち、モノは充足し、社会インフラも整い、経済的にはとても「豊か」なのだ。
 しかし、何故か「豊かさ」を感じられない現状もある。この国の悪い点を挙げればこれもたくさんあろう。自殺者が年間3万人もいる。しかも、1998年以降、急に2万人から3万人に上昇し、以降13年連続で3万人台である。http://d.hatena.ne.jp/macky-jun/20080619/1259934713
老人の孤独死も子供の虐待も増加している。家族が崩壊している。何故、核家族化したのか?若者の半分が非正規社員になっており、引きこもりや孤立化が起きている。老人も若者も孤独になっているのだ。
 かつて、1億総中流と言われたこの国は社会主義のようなおかしな国でもあったが、いまや年収200万円以下が34%となり、新自由主義の名の下で所得階層の2極化が進行している。一体感のある共同体意識は薄れ、余裕は無くなり、人々の心はササクレだっている。人々から夢や希望の文字が消えているとも言われる。未来への期待感が急速に薄れているようだ。経済大国もいまや目的を失った老大国となったようだ。
 モノの豊かさを追求してきた我々日本人は、一生懸命働いて目標を実現してきた。しかし、一方で本来持っていた日本人のこころを置き去りにしてきた。ドラマの中で、片親で苦労しながら母に育てられた息子(石坂浩二)がその母の死に対してあまりにも冷淡で、それを怒った叔父の亡霊(ビートたけし)に殺されてしまう。息子が言うセリフ「私は何を間違えたのでしょう?」に、このドラマのテーマが象徴されていた。われわれ日本人はいったい何を間違えたのだろう。